発達障害・アディクションの自然療法

発達障害・アディクションの自然療法
これはアディクション研究で世界的に著名なマーリーン・ミラー修士、デービット・ミラー博士が著した米国でミリオンセラーとなった書「Staying Clean & Sober」の一部で、テキサス大学精神薬理学ケネス・ブラム教授の研究にもとづいて書かれたものです。

アミノ酸の重要性

アディクションの研究において、これまでで最も注目すべき発見はアミノ酸療法に関するものです。神経伝達物質はタンパク質の成分であるアミノ酸から作られ、何種類かの重要なものはアディクションに深く関係し強い影響を受けています。渇望、不安、神経過敏、抑うつなどの離脱症状から回復するためには、神経伝達物質のバランスが大切になります。過去20年にわたりアディクション治療の現場では、脳内化学物質のバランスを回復することができる特定のアミノ酸が使用されてきました。

脳とアミノ酸

細胞の大部分はアミノ酸から構成されていて、 細胞の複製・修復・成長には多種のアミノ酸の絶妙なバランスが必要です。人間の行動・認知、集中、記憶、気分、睡眠、のどの渇き、食欲、注意力、感情は神経系の機能に関係しています。そして神経系はアミノ酸とビタミン・ミネラルによって調節されています。

神経伝達物質はアミノ酸から作られます。例えば、セロトニンは、L-トリプトファンから作られます。ドーパミンとノルアドレナリンはL-フェニルアラニンとL--チロシンから作られます。エンドルフィンとエンケファリン量はD-フェニルアラニンとグルタチオン(グルタミン酸、グリシン、およびシステインからなる)により増加します。

アミノ酸の補充が脳に有効なのは明らかですが、それは言うほど簡単なことではありません。神経伝達物質は補因子を含め、お互いに複雑に関係しあっているからです。しかしアミノ酸療法はアディクションの治療法の中では最も単純明快なものです。そこに巧妙なメカニズムや理論はありません。アディクションに対するその治療効果は研究により示されています。要するにアミノ酸療法は効くのです。

前の章で説明したように薬物への渇望と離脱症状は、神経伝達物質とそれらを制御する酵素が関与する脳の報酬中枢の誤作動によるものです。研究によりアミノ酸療法はストレスを軽減し、うつ病を軽減し、グルコース及び神経伝達物質受容体の感度を増加させ、セロトニン・ドーパミン・エンケファリン・タウリン・GABA量を回復する効果があります。これでは理想的すぎて信じられないという人もいるかもしれません。事実のみを以下に示しましょう。

必須及び非必須アミノ酸

アミノ酸はタンパク質の材料であり、何十個も連なりポリペプチドと呼ばれ何万と連なったものがタンパク質と呼ばれます。グルタチオンのようにわずか3個のアミノ酸からなるものもあれば、ヒト成長ホルモンのように191ものアミノ酸分子からなるものもあります。

一般的にはアミノ酸20種(タウリンを含めるのなら21種)が人のタンパク質合成に必要だと言われています。 (注:ホモシステインを除き、700以上存在する非タンパク性アミノ酸については本書では論じません。)人は体内にあるアミノ酸からこの21種のアミノ酸を作ることができます。正常では体内で作ることができるので、食べ物から摂取する必要はありません。よってそれを非必須アミノ酸と呼びます。しかし「非必須」という言葉は、重要ではないという意味ではないことを心に留めておくことが大切です。これは単に、理想的な状況下では食べ物から摂取する必要はないという意味です。

体は神経伝達物質に必要な全てのアミノ酸を作っているわけではありません。ほとんどは食物に由来し血液供給を介して脳に来ています。これらは必須アミノ酸と呼ばれ、食物・サプリメント・静脈内投与製剤の形があります。

近年の研究結果から、重要な第三のカテゴリー、条件付き必須アミノ酸が分かりました。これらは健康でストレスの少ない人生を送っている人にとっては非必須です。しかし、病気や慢性ストレスの期間中これらのアミノ酸は必須となります。体が十分な量を作れないので食事やサプリメントから摂取する必要があります。アディクションに関連する条件付き必須アミノ酸の典型は、L-グルタミン・L-チロシン・タウリンです。多くの専門家は、9つの必須アミノ酸、7つの非必須アミノ酸および5つの条件付き必須アミノ酸を提案しています。(表1を参照)

表1:必須及び非必須アミノ酸

必須アミノ酸        非必須アミノ酸

イソロイシン        アルギニン*
ロイシン          シスチン*
リジン           グルタミン*
メチオニン         グリシン
フェニルアラニン      チロシン*
スレオニン         アラニン
トリプトファン       プロリン
バリン           アスパラギン酸
ヒスチジン**        セリン
              シスチン
              タウリン*
              グルタミン酸

条件付き必須アミノ酸

アミノ酸ヒスチジンは、子供たちだけで不可欠です。

アミノ酸の構造

グリシン・タウリンを除いてアミノ酸の大部分は、鏡像異性体の形をとります。これらはD-体およびL体と呼ばれています。 Dは右旋性dextro(ラテン語で右)Lは左旋性levo(ラテン語で左)の略です。この記号は分子構造の回転方向を表すとともに、そのアミノ酸を含有する液体を通過する際に光が屈折する方向でもあります。自然界ではL体が一般的であり人間の体との互換性があります。 D-フェニルアラニンを除き本書でアディクションに対して推奨しているアミノ酸は全てL体です。

脳内神経伝達物質は若干の例外を除き、主に複数種のアミノ酸の化学結合により作られています。しかしアミノ酸の中にはグリシン・GABA・タウリンなど、単体で神経伝達物質として働けるものもあります。

アディクションに関連するアミノ酸

アディクションに関わる神経伝達物質の元となるアミノ酸には以下のものがあります。

•D-フェニルアラニン(エンケファリンを増やす)

•L-フェニルアラニン(ドーパミン・ノルエピネフリンを増やす)

•L-トリプトファン・5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)(セロトニン・メラトニンを増やす)

•L-チロシン(ドーパミン・ノルエピネフリンを増やす)

•L-グルタミン(GABA・グルタチオンを増やす)

•GABA(単体で神経伝達物質)

•タウリン(単体で神経伝達物質)

•L-システイン(グルタチオンを増やす。結果、エンケファリンを増やす)

以上より、離脱症状・アディクション再発に関してアミノ酸がいかに重要かが分かると思います。

フェニルアラニン

L-フェニルアラニンは必須アミノ酸であり、生命維持のために食事から摂取する必要があります。脳内においては、L-チロシン・ドーパミン・ノルアドレナリンへと代謝されます。(補酵素としてビタミンB6が必要)

その後の脳内代謝物を見ても分かるとおり、L-フェニルアラニンは気分を高め、自信とモチベーションを向上させ、エネルギーを増加させ、注意力を維持し、痛みを軽減し、間接的に渇望を減少させ、記憶と学習を助け、食欲を抑制することができます。

フェニルアラニンにはD体・L体・DL混合体(DLPA)の3種類があります。 L体(LPA)は自然の中や食品中に見られる最も一般的なタイプであり、フェニルアラニンがタンパク質の中に存在する時の形です。D体(DPA)はエンケファリン分解酵素を阻害することにより、脳内報酬系で重要なエンケファリン量を増やします。エンケファリンは脳、脊髄、副腎で作られる天然のモルヒネ様鎮痛物質です。痛みの予防に役立つだけでなく、喜びや幸福感といった感情を作り出し、ストレスを軽減し、モチベーションを維持しています。エンケファリン量の不足はアルコール依存症、離脱症状、再発に関連していて、エンケファリン量の増加はアルコール摂取量を減少させます。

注意:妊娠・授乳中・パニック発作・重度の不安症の方はL-フェニルアラニンを服用しないでください。

L-フェニルアラニンの代謝物であるアドレナリンが悪影響を及ぼす可能性があります。(訳者注:研究で報告された悪影響はありません。)

黒色腫皮膚癌・フェニルケトン尿症(PKU)の場合は服用しないでください。モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(セレギニン塩酸塩/パーキンソン氏病の一部に使われることがある)を服用している場合は使用しないでください。 その場合L-フェニルアラニンは高血圧を引き起こす可能性があると報告されています。

L-トリプトファン

L-トリプトファンは、渇望を減らすセロトニンとリラックスした睡眠に関係するメラトニンの量を増やします。1988年に日本製のL-トリプトファンの不良品により1500人が体調をくずし37人が死亡する事件があり市販薬としては購入できなくなりました。問題はL-トリプトファンそのものではなく処理過程における混入物だったのですが、L-トリプトファン購入には処方箋が必要となりました。しかし近年すべての制限が解除され、再び市販薬として入手可能となりました。ただ取扱店は少ないようです。もしトリプトファンが手に入らないのなら誘導体の5ヒドロキシトリプトファン(5HTP)でかまいません。効果は同じです。

トリプトファン摂取量が不足していると、セロトニン量が低下し、うつ病、不安、神経過敏、不眠を引き起こし、疼痛閾値は低下します。結果として、アルコール/薬物乱用、炭水化物の過食、多動、怒り、暴力、性的乱交、コントロールできないギャンブルなどの行動につながることがあります。

トリプトファンを大量に含む食品はあまりありません。一方多くの食品は、脳に入る時にトリプトファンと競合するチロシンを含みます。トリプトファンも5-HTPも安全であり、自然なリラックス、精神安定、抗うつ、睡眠補助作用があります。トリプトファン、5-HTPいずれを摂取するにせよ、セロトニンに代謝する補酵素であるビタミンB6の同時摂取を忘れないでください。

L-チロシン

L--チロシンは注意力を高めエネルギッシュであるために必要なアミノ酸です。脳内興奮性伝達物質であるドーパミン・ノルアドレナリン量を増やします。甲状腺ホルモンの材料としても重要です。身体的、精神的、感情的に落ち込んだ時はチロシンがぴったりです。集中力が続かない時はチロシンと補酵素であるビタミンB6を試してみて下さい。

L-グルタミン

L-グルタミンは渇望を抑えるアミノ酸です。脳内のGABA量を増やし、間接的にエンケファリン量も増やして、アルコール、コカインなど対象によらず渇望を減らし満足感を与えます。

加えてL-グルタミンは、アルコール、アスピリン、イブプロフェンなどによる小腸内壁のダメージ(リーキーガット)を回復させるための燃料になります。また最も強力な解毒、抗酸化作用をもつグルタチオンの前駆体でもあります。生きている動物のタンパク質にはグルタミンが多く含まれていますが、食べ物の中にはあまりありません。天然のL-グルタミンの95%以上は加熱によって不活性化されます。最もよいのは粉末タイプのサプリメントです。これは味がなく、液体と容易に混合でき(温めてはダメ)基本的に無毒です。しかし、肝臓や腎臓障害を持つ人は、L-グルタミンを服用してはいけません。(訳者注:研究で報告されたものはありません。)

GABA(γアミノ酪酸)

GABAはアミノ酸そのままの形で神経伝達物質として働きます。 GABAは心を落ち着かせるアミノ酸です。不安を軽減し、精神的、肉体的に安定させます。前述のように、グルタミンはGABAの産生を促進し渇望を抑えます。アルコール依存・ベンゾジアゼピン系薬物依存症では多くの場合、GABAが不足している状態です。ある科学文献はGABAは血液脳関門をほぼ通過しないとしていますが、アディクションの立場の報告ではそうは考えません。あなたは、GABAの摂取も良いですし、GABAの産生を促すためにL-グルタミンを摂取するのもお勧めです。両方摂取してもかまいません。

タウリン

アルコール依存症者で不足しがちなのが抑制性神経伝達物質であるタウリンです。タウリンはホモシステイン・L-システインの代謝物です。慢性ストレスや病気の場合、条件付き必須アミノ酸となり補充する必要があります。

その効果は多彩ですが、タウリンは過剰なフリーラジカルを捕捉することによって脳、肝臓、心臓細胞の酸化防止剤として働きます。また胆汁成分を形成するためにコレステロールと結合し神経伝達物質として機能し、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウムの細胞内濃度を調節するのに役立ちます。

デービットの場合

:私がアミノ酸療法に出会ったのは、アルコール依存症からの禁酒生活が10年以上経った後だった。禁酒と戦っていた間は何も私を助けてはくれなかった。ストレス過敏と刺激物摂取に苦しんでいた。その時アディクションの専門家がアミノ酸サプリメントについて教えてくれたんだ。実際やってみたら効果はてきめんだった。刺激物の摂取はすぐに減った。すべてがトーンダウンしたように見えた。人生からスリルが減り、周りから騒がしさがなくなった。一言で言って安らぎを感じたんだ。誰かがなだめるように毛布で私を包んでくれたようだった。内なるものが戦いから解放されたようだった。

効果は劇的で妻がすぐにそれに気づいた。彼女は私がリラックスしていて、一緒にいるのが楽になったと言っていた。私がアミノ酸を飲み忘れたら、私より彼女の方が先に気づくと思う。こんなに満ち足りた気分なのは人生で初めてだよ。まだ気分の浮き沈みはあるけど前と比べたら全然へっちゃらさ。

アミノ酸療法の背景

アミノ酸療法の研究に多大な貢献をした研究者の一人に私たちの同僚、ジュリア・ロスがいます(『ダイエットキュアとムードキュア』の著者)。彼女はカリフォルニア州ミルバレー依存症施設のディレクターであり、17年間にわたり経口アミノ酸サプリメントを使用し驚異的な成果を出しています。彼女の経験と知識を紹介しましょう。

私たちと同様ジュリアは、1980年代のケネス・ブラムの研究結果を知りこの療法を始めました。

長年アディクション患者の神経化学を学んだブラムは、その治療法研究にも着手しました。神経伝達物質による反応が報酬を生まない場合渇望がアディクションを生むとして、何が渇望を強くし何が回復を妨げるのだろう?と彼は考えました。

アディクションにおける遺伝を研究した結果、ブラムはアミノ酸にたどり着きました。彼がアディクション回復のためのアミノ酸経口サプリメントを初めて開発しました。

以下にアディクションに関連する神経伝達物質の働きを示します。

神経伝達物質:ドーパミン

作用:良い感情、満足感、快適性、敏捷

欠乏に伴う物質の使用:アルコール、マリファナ、コカイン、カフェイン、アンフェタミン、砂糖、タバコ

欠乏症状:空虚感、喜びと報酬の欠如、疲労、うつ、意欲の欠如

アミノ酸:L-フェニルアラニン、L-チロシン

神経伝達物質:ノルアドレナリン

作用:覚醒、エネルギー、刺激、精神集中

欠乏に伴う物質の使用:コカイン、スピード、タバコ、マリファナ、アルコール、砂糖

欠乏症状:エネルギーの不足、うつ病、集中力の低下

アミノ酸:L-フェニルアラニン、L-チロシン

神経伝達物質:GABA

作用:心を落ち着かせる、リラックス

欠乏に伴う物質の使用:バリウム、アルコール、マリファナ、タバコ、砂糖

欠乏症状:不安、パニック、緊張、不安、不眠

アミノ酸:GABA、L-グルタミン

神経伝達物質:エンドルフィン/エンケファリン

作用:物理的・感情的な痛みの緩和、喜び、いい気持ち、幸福感

欠乏に伴う物質の使用:ヘロイン、アルコール、マリファナ、砂糖、チョコレート

欠乏症状:感情的・物理的な痛みに対する過敏症、無快感症、不完全感、快適さや喜びへの渇望、特定の物質への渇望、落ち込み

アミノ酸:D-フェニルアラニン、DLフェニルアラニン

神経伝達物質:セロトニン

作用:感情的な安定性、自信、疼痛耐性

欠乏に伴う物質の使用:アルコール、砂糖、チョコレート、タバコ、マリファナ

欠乏症状:うつ病、こだわり、強迫症、心配、自尊心低下、睡眠障害、お菓子への渇望、神経過敏、恐怖、かんしゃく、暴力、乱交

アミノ酸:L-トリプトファンまたは5-HTP

神経伝達物質:タウリン

作用:落ち着き、睡眠と消化の促進、発作コントロール

欠乏に伴う物質の使用:ベンゾジアゼピン、アルコール

欠乏症状:発作の増加、不眠、不安、消化不良

アミノ酸:タウリン

研究結果

1950年代、アルコール依存症に対する栄養療法ではロジャーウィリアムズ博士がパイオニアでした。彼は研究の結果、毎日3000~4000mg(大匙一杯)のグルタミンはアルコールへの渇望を抑えお菓子への渇望を減少させることを発見しました。

現在ではアミノ酸療法は、薬物への渇望を抑え、ストレスを減らし、離脱症状である震えを抑え、コカインによる夢を減らし、性欲を高め、生理的ストレスを減らし、行動を改善し、集中力を高め、グルコース受容体の感受性を高め、セロトニン、ドーパミン、エンケファリン、タウリンやGABAなどの神経伝達物質を回復させることが分かっています。

アルコール依存症へのアミノ酸の研究では、ストレス、薬物渇望、うつ病、神経過敏、被害妄想、怒り、不安の低下が報告されました。また、エネルギーに満ちた感じ、自信、幸福感が報告されています。この療法では28日間の治療プログラム達成率が6倍になり再発率も低下しました。

覚せい剤乱用者へのアミノ酸の研究では、アミノ酸補充群では対照群よりも薬物飢餓/渇望スコアが50%低下しました。治療脱落率は、対照群の37%に比べてアミノ酸補充群では4.6%。再発率は対照群87%に対してアミノ酸補充群20%でした。

炭水化物への過食の場合は、90日間のアミノ酸補充で平均12kg減量し再発率は18%でした。アミノ酸を補充しない治療群では平均4.5kgの減量で、再発率は82%でした。

1997年には、ダイエットに関する2年間にわたる厳格な医学的調査が発表されました。治療は、1日の食事のうち2回か3回を粉末状の栄養ドリンク(オプティファスト)で代用するというものでした。 (流動食によるダイエットは即効的ですが、リバウンドもテキメンな事は現代では常識です。体が飢餓モードに入った後に食べ物が入ってくると、効率よく蓄えようとするのでしょう。)本研究では毎日アミノ酸を補充する群と、アミノ酸を補充しない群で比較しました。追跡調査2年の時点で、アミノ酸補充群では以下の結果を示しました。

•男女ともに過体重者の比率が半減しました。

•渇望が女性で70%、男性で63%減少しました。

•過食が女性で66%、男性で41%減少しました。

•リバウンド率は対照群41.7%に対しアミノ酸群14.7%でした。

うつ病にトリプトファン

2人のイギリス人研究者が、トリプトファンと一般的な処方薬であるトフラニールの効果を比較した(トフラニール:一般名イミプラミンの三環系抗うつ薬)。両群においてうつは改善された。効果は同等であり、トリプトファン群では副作用がなかった。トフラニール群の副作用は視覚異常、口の乾燥、低血圧、尿閉、動悸、肝炎、発作などであった。

精神安定剤には一時的な効果しかありません。我々はザナックス(日本ではソラナックス)服用者が不安に襲われているのをいく度となく見てきた。彼らはそれ自体には依存しないと言い続けてきた。精神安定剤依存など存在しないと。

「アミノ酸による回復」より

血液脳関門

栄養素は血流を介し体全体に運ばれます。これらの栄養素が通りすぎる時、各臓器は自分に必要なものを取り込みます。血液中には脳を傷つけるような物質があるので、脳は特定の物質しか通さない薄い保護膜で包まれています。トランスポーターまたは担体タンパクと呼ばれる特定のタンパク質は、ポンプ作用により選択的に栄養素の膜通過を可能にします。

当然このメカニズムは、食品由来サプリメント由来両方のアミノ酸に当てはまります。しかし1つ問題があります。あまりにも多くの種類のアミノ酸が一度に脳に押し寄せた場合、ポンプが過負荷になり大量に到達したアミノ酸だけが脳に入っていくのです。

脳におけるこの吸収の競合を避けるために、アミノ酸は空腹時に摂取する必要があります。もし高タンパクの食事と一緒にアミノ酸サプリメントを取ったら、あなたの脳が必要とするアミノ酸は血液脳関門を透過しない可能性があります。良い方法は、吸収を高める効果のある少量のビタミンB6ビタミンCと一緒に「食間」に単一のアミノ酸を取ることです。

複数のアミノ酸を取る場合は、異なる時間にそれらを取るとよいでしょう。集中力を高めたい時はL-チロシンを取り、リラックスしたりぐっすり寝たい時は5HTPを取って下さい。アミノ酸の配合を取る場合、必要としている特定のアミノ酸を一日の異なる時間に摂取するのがよいでしょう。

経口アミノ酸療法

ある種のアミノ酸の欠乏は覚せい剤使用の原因となります。またある種のアミノ酸の欠乏は、安定剤使用の原因となり、あるものは鎮痛剤使用の原因となります。同様に、異なる薬物の過剰使用が、別の栄養不足の原因にもなります。(例えば、アルコールの乱用がL-トリプトファンの血液から脳への吸収を低下させ、結果セロトニン不足を引き起こします。)断薬による症状は依存薬物使用以前にどんなコンディションだったかによりますし、どの薬物を使ってきたのか、どの程度の量使ってきたのかにもよります。

使ってきた薬物を参考にして治療アミノ酸を選ぶよりも、薬物を使うとどうなるか、薬物を使わないとどんな離脱症状がでるかを参考にした方が良いでしょう。表2としてガイドラインを示します。

多くのアミノ酸の最小有効用量は、1日あたり100mgであり、効果を確認しながら1日あたり3000mgまで増量が可能です。(例外として5-HTPは1日量50mg~300mg、L-グルタミンは1日量250mg~12000mgです。)通常1日量500~1500mgを2回ないし3回に分けて摂取します。分子量の大きいアミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、5HTP)は脳への分布競合があるので、空腹時に水で摂取するのが効果的です。

(訳者注:一般向けに「吸収」と「分布」を混同しているものと思われる)

表2:アミノ酸選択ガイドライン

離脱症状          推奨アミノ酸

不安、ストレス、緊張    GABA、タウリン、5-HTP

低エネルギー、無気力    L-チロシン

集中力低下、記憶力定期   L-チロシン

過敏性           L-フェニルアラニン、D-フェニルアラニン

不眠            L-トリプトファン、5 HTP、GABA、タウリン

神経過敏、否定的、心配症  L-トリプトファン、5-HTP

渇望            L-グルタミン、GABA、L-トリプトファン、5-HTP

うつ、無快感症       L-チロシン

マルチビタミン・ミネラル製品との併用をお勧めします。ビタミン・ミネラルはそれ自体も大切ですが、脳内でのアミノ酸から神経伝達物質への代謝において非常に重要です。脳内神経伝達物質を作るには、アミノ酸それ自体ではほぼ何もできません。それ自体が神経伝達物質である遊離アミノ酸(タウリンやグリシン)を除き、他のほとんどのアミノ酸はビタミンやミネラル(補因子)の助けが必要です。例えばビタミンB6は、ドーパミン・セロトニンの合成に必要ですし、ビタミンCはドーパミンをノルアドレナリンに変換するのに必要です。

脳内化学物質のバランスを整えるというのは、セロトニンを作るためにある種のアミノ酸を取るとか、ドーパミンはこのアミノ酸だとかオピオイドの量を上げるために、とかそういう事ではありません。以前にも述べたように、多くの神経伝達物質が脳内報酬をもたらすために複雑に影響し合っています。ドーパミンはアディクションに関連する重要な神経伝達物質として同定されましたが、それ単体で働くことはありません。神経伝達物質の相互作用が大脳辺縁系におけるドーパミン報酬をもたらし、報酬欠陥と離脱症状を軽減するのです。単一のアミノ酸が特定の神経伝達物質の形成に関与することもありますが、問題を解決するためには組み合わせ処方が必要になってくるのです。

「医療やレクリエーションにおいて現在広く使用されている薬物は、神経伝達物質レベルの根本原因に対処していない。薬はたんに、蓄えてある神経伝達物質を一時的に過剰放出させるだけだ。薬は神経伝達物質の産生を増加させない。関連するアミノ酸・ビタミン・ミネラルの脳への輸送が、脳の栄養不足を補うことができる。

「アミノ酸による回復」より

アミノ酸療法の安全性

1980年代半ばにおけるアミノ酸療法の開始以来、何千人もの人々がほぼ副作用なく安全に治療を受けてきました。アミノ酸療法に関してFDAへの苦情は発生していません。唯一の例外は、以前の章で説明したL-トリプトファンの混入の問題でした。

食事では不十分な理由

アミノ酸の主な供給源は食事ですので、欠乏は食事のみで何とかできるのではないか、という疑問もあるかもしれません。答えは「できるかもしれない」ですが、臨床的には困難があります。確かに栄養食品は重要であり、それについては別の章で述べます。セロトニンを生成するために牛乳からL-トリプトファンを取ることができます。肉や魚を食べてドーパミンの材料であるチロシンを取ることができます。しかし食事だけでは不足である理由がいくつかあります。

現代農業、食品加工、調理過程では私たちの脳が必要とする栄養を提供することはできません。例えばL-グルタミンだと最大95%が調理によって破壊されます。また食物アレルギーが増加しており、十分消化吸収ができていません。その結果アミノ酸の欠乏が起きてきます。加えてアディクション患者の場合、遺伝的要素やストレスに対応するためには食事からだけでは補いきれない量のアミノ酸が必要になってきます。

また食事で渇望をコントロールしようとするとジレンマが発生します。使用薬物の断薬下ではセロトニン不足となり、結果として炭水化物への強い渇望が生まれます。結果を出せるだけの長期間栄養療法を行っていく場合、意思の力だけでは不十分です。アミノ酸サプリメントは、食事療法をサポートするためにかなり早い段階でこれらの渇望を抑えることができます。

特効薬はありません

私たちは、アミノ酸療法は万能薬であるという印象を与えたくはありません。この世に万能薬はありません。私たちはアミノ酸療法の熱狂的なファンですが、アミノ酸補充は良好な栄養状態や健康生活の他の面に代わるものではありません。(置換療法と呼ばず、補充療法・サプリメントと呼ぶ理由です。)また私たちはアミノ酸サプリメントさえ飲めば、誰でも私デビッドのようにすぐに結果が出ると思ってもらいたくもありません。あなたも含めて多くの人は少し試してみる必要があるかもしれません。たとえばリラックスや睡眠のためにGABAを取る場合に期待する効果は出ないかもしれない、代わりに5-HTPとタウリンを試してみて下さい。

時に、アミノ酸の大量摂取などの場合は特に胃のむかつきなどの軽度の副作用または異常な反応が起きることもあります。アミノ酸は1〜4時間以内に体内から消失するので副作用が持続することはありません。もしアミノ酸サプリメントを摂取して副作用が起きたなら、全ての摂取を中止した後、1種類ずつ再開して何が原因だったか確認してください。効果が穏やかでよく分からない場合は、症状が改善されるまで我慢強く継続する必要があります。体が受け入れさえすれば最初の数日で効くこともあります。続けることで効果が見えてくることもあります。

誤ったアミノ酸摂取により望まない結果が出ることもあります。神経を落ち着かせたいのにチロシンを取っても期待する効果は出ません。ぴったりのアミノ酸の組み合わせを見つけるには、教科書通りにはいかないのであなた自身による臨床実験が必要です。すぐに効果が出ないからといって諦めないで下さい。

アミノ酸複合体

多くの場合アディクション患者が自分の症状を緩和し精神感情の状態で正常を達成するためには、1つまたは2つの特定のアミノ酸が必要です。 (これらの単一のアミノ酸製品は、薬局や健康食品店で購入することができます。)しかし、1日に何種類もアミノ酸を飲まなければならないアディクション患者(1回6錠を1日3回)では適正に管理できない事もあります。彼らにとってアミノ酸の配合製剤が最も有用です。数種類を含む製剤によって個別に飲む必要がなくなります。

各種問題に対応した配合アミノ酸製品が販売されています。アルコールやヘロインなどの神経抑制薬を好むアディクション患者に対しては、「ダウナー」向けアミノ酸配合剤をお勧めします。コカインや覚せい剤のアディクション患者に対しては、「アッパー」向けアミノ酸配合剤をお勧めします。

単一のアミノ酸と同様に、複合アミノ酸も食間(食前1時間、または食後2時間)摂取がよいでしょう。複合アミノ酸に単一アミノ酸を追加する場合は服用時間をずらすのがよいでしょう。

注意欠陥障害を併発しているアルコール依存回復者のキャロルは、D-フェニルアラニン、L-チロシン、L-グルタミン、ビタミン、ミネラル配合製剤を1日3回飲んでも、彼女が集中困難と過敏を感じる昼下がりにはぐったりしていました。これに対し彼女はチロシンの追加で対応しました。試行錯誤が結果を生みます。

アミノ酸補給のためのガイドライン

アミノ酸補給のメリットを最大化し、有害作用を最小限にするためのガイドラインを以下に示します。

アミノ酸は空腹時に摂取すること。タンパク質を含む食前30分以上、食後1時間以上が理想的です。食事のタンパク質はアミノ酸からなり、アミノ酸製剤と競合します。どうしても空腹時摂取を忘れてしまう場合は増量してください。それで効果はでますが空腹時摂取には勝てません。トリプトファン(または5-HTP)は例外です。タンパク質とトリプトファン/ 5-HTPを同時に取ると、効果は全く出ません。単独で、あるいは炭水化物やタンパク質フリーのスナックと取って下さい。

ひどいストレス下にある場合は通常量より多めに取って下さい。

アミノ酸サプリメントを取る期間に正しい答えはありません。軽度のアディクション患者であれば比較的短い期間ですむ場合もあります。しかし発達障害時からの慢性的症例において、断薬中に不快な症状が続くようであればアミノ酸は一生必要かもしれません。必要な神経伝達物質を作れない人には、正しい食事と毎日のアミノ酸サプリメントが大切なのです。適切なアミノ酸を取ったとき人は多分驚くでしょう。ハイになる事はありませんが幸せを感じイライラは減るでしょう。穏やかで気力と集中力に満ちた状態、要するに「ふつう」を感じます。加えて薬物・炭水化物への渇望が減っていることに気づくでしょう。

離脱症状からの解放

従来の治療では何年間禁薬を維持したとしても、脳化学物質の低下からくる症状は消えません。アミノ酸経静脈栄養ではこれが速やかに軽減します。断薬後に不快な症状が続いている人のQOLを改善することができるのです

ボブは禁酒後12年が経っていて、定期的にAAにも出席し人生はうまくいっていると考えていました。彼はAAに来る人の禁酒にも協力し、AAの存在に感謝していました。しかし彼は本当に幸せではなかったのです。ストレスに非常に敏感で時にかなりイライラしていました。集中力不足もありました。言葉に表せない不快感があり、それはなくなりませんでした。酒はもう勘弁だけど、酒を飲んだあの感じにはなりたかったのです。

ボブはアミノ酸経静脈栄養治療を受けていた回復者に出会い驚きました。12年間禁酒していましたが、これは自分にも効くかもしれないと考えました。長い間続いていた不快感がすぐになくなったのです。ボブはその後栄養療法の熱狂的な支持者になり、アディクション患者には(断薬後何年たった人にでも)誰にでも紹介していました。

時にアミノ酸経静脈栄養治療のあとに自信過剰になる患者がいます。薬物への欲求がなくなっているので勘違いするのも分かります。しかしアディクションの問題は脳内の化学成分だけで片付くものではないのです。生活のあらゆることに影響を与えています。新しい行動パターンを学ぶ必要があります。人生を変える必要があるのです。癒しは脳内で起きるので自動的というわけにはいきません。

幸運にもアミノ酸経静脈栄養療法を受けた患者が、支援グループに受け入れてもらうのは難しい場合があります。従来の方法で苦労している人達には栄養療法後の患者に必要なケアが分からないのです。

ポールはアミノ酸補充療法直後に相互支援グループに行った一人でした。彼はグループミーティングで、断薬後2週目でありこれが初めてのミーティングだ、と語りました。また自分が受けた治療法とその効果について話しました。当然のことですがメンバーは懐疑的でした、「君はまだ酔ってるな、すぐダメになるよ。デナイアル(状況否定)の状態だよ。」メンバーの1人がポールは2ヶ月続かないだろうと言いました。ポールは自分の人生に起きた奇跡に対するこの反応にがっかりしました。それでも彼は参加を続けて良い状態を維持しました。この話は数年前のものですが彼は今もリラプスしていません。

私たちが話している症例の多くが長年失敗を繰り返してきた患者だということを確認しておきます。アミノ酸治療を受けに来る人の多くはその道のベテランとも言えます。何度も失敗してきているので治療施設は彼らの受け入れを拒否する可能性もあるわけです。彼らは薬物の抜けた快適な人生をあきらめ続けてきたのです。一部の患者は従来の治療で回復するかもしれません。しかし静脈栄養治療の本当の効果について知らないあなたに伝えたいのです。

回復の物語

回復への道は果てしない山登りのようなものだと皆が言うように、ブライアンはヘロインのリラプスを繰り返していました。彼は何度治療を繰り返してきたか覚えていません。デトックス治療に行った4時間後に密売人に連絡した時もあれば、2年間禁薬できたこともありました。薬はもう大丈夫となり結婚し子をもうけましたが、またやってしまい嫁は子を連れて出ていきました。禁薬中は12ステップミーティングに参加し、いかに以前は幸せだったか、本当の自分は社交的で人気者だったかを話しました。

しかしブライアンには秘密がありました。一度たりともヘロインが頭から離れたことはなかったのです。ヘロインを使うようになったのはしょうがなかったんだと自分に言い聞かせましたが、毎日は大変になる一方でした。ヘロインの良さに骨の髄までやられていました。いつもこっそり使いしばらくはばれませんが、結局治療施設送りになるのです。薬が体から抜けても、心地よさはありません。誰もが彼を諦めるようになりました。本人も諦めていました。

しかしブライアンは幸運でした。あきらめない友人がいたのです。ジョーはブライアンを励まし続けました。ジョーはアミノ酸経静脈栄養治療を耳にしてブライアンに伝えました。ほぼ押し売りでしたがブライアンは試すことにしました。諦めていたしもうこれ以上失うものは持っていませんでした。しかし心の奥底では望みを捨てていなかったのでしょう。

まずセルフケアプランとリラプス予防の行動変更プランを作成しました。さらにアミノ酸経静脈栄養療法を受けて、今までに経験したことがないような感じでした。それはヘロインを使った時以上の心地よさでした。

次には、いつあの渇望の苦しみがまた来るのかと心配しましたがそれは来ませんでした。その後は外来治療に移りましたが、それも今までのものとは別物でした。思考はクリアになり学んだことを生かせるようになっていました。

慎重に人生をやり直し始めました。過去にも禁薬期間はありましたが今回は明らかに違いました。外観や態度に変化が出ました。初めて薬なしで快適でした。1日1日を大切に生きることで、毎日は悪化することなく好転していきました。結婚は続けられませんでしたが良い親にはなれました。芸術家としてまた絵を描き始めました。禁薬期間は最長になりましたが、今の人生においてそれはたいした事ではなくなりました。ブライアンはようやく今を生きることができるようになったのです。
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